カーポートSC 開発ストーリー
〜従来の価値観を覆す、
住宅と美しく調和するカーポート〜

「住宅に調和する」という新しいコンセプトのもと、ミニマルなデザインで業界に風穴をあけた「カーポートSC」。その誕生秘話をご紹介します。
少し前まで“カッコ悪い”ものだった
カーポート
カーポートSCの発売は2017年。その少し前、2010年代前半までは、カーポートといえば、透明性のあるポリカーボネート屋根や、折板屋根のカーポートが一般的でした。「機能は高く・コストは低く」を求められ、世の中にあるのは、どれも似たような商品ばかり。もちろんデザイン性は二の次で、コモディティ化が進んでいました。
当時、私たちのもとに聞こえてきていたのは、「住宅にカーポートを設置するのはカッコ悪い」という声。それもそのはず、当時主流だったカーポートは、骨組みが目立ちやすかったり、屋根にたまったゴミが見えやすかったりと、ノイズになる要素が生まれてしまい、住宅と調和しにくくなりがちだったからです。

かつて住宅における車の置き場所はガレージが主流で、住宅と調和して発展してきました。しかし、より安価なカーポートが誕生し、既製品化されて以降、住宅とカーポートは別の進化を遂げることになったのです。住宅がデザイン性においてどんどん進化していく一方、カーポートは取り残され、住宅や景観との調和性が課題となっていたのでした。
「住宅に設置するのがカッコ悪いと思っている人たちから、選ばれるカーポートを作ろう」
住宅の邪魔にならずに調和するものを作り、カーポートの概念を変えることで、日本の街並みを変えていきたいーーこの思いのもとで、企画担当者、デザイナー、開発担当者がワンチームとなり、新しい挑戦がスタートしました。

どんなに困難でも、ゆずれない思い
「住宅に調和するカーポートをつくる」。このゴールに向けたデザインプロセスでは、まず住宅の要素を分解して、カーポートのデザインにも当てはめていくことから始めました。その際、『構成の調和』『形状の調和』『素材の調和』の3つが重要であると考えました。形だけ調和してもダメで、3つの軸がすべて揃って初めて『調和』だととらえたのです。

このコンセプトを実現するための開発プロセスは、さまざまな「初めて」への挑戦がありました。例えば、カーポートSCを特徴づける要素の一つ、「薄く、フラットな屋根」。カーポートは雨を流すため、屋根の勾配が必要になります。カーポートSCの開発当初は、その勾配の付け方が複数案あり、構造、コスト、デザインの三立で社内では侃々諤々となりました。
最終的には、「住宅と美しく調和する」という原点に立ち戻り、屋根そのものにわずかな勾配をつけ、その屋根の厚みをわずか4cmにすることで、「雨を流す機能」と「住宅との調和デザイン」を両立させたのです。

わずか4cmという薄さを実現

また、屋根で受けた雨水を集めて地面へと流す役割を果たす「雨樋(あまどい)」も、住宅との調和を優先し、屋根・柱に内蔵することで、凹凸のないノイズレスなフォルムを実現しました。
その後も、コストや施工性など、乗り越えるべき壁はたくさんありました。開発担当者とは「こうしたい」「いや、できない」「そこをなんとか」と、数えきれないほどのやりとりを交わしました。営業担当者からは、ようやくの思いで完成した試作品に対して「屋根の下が暗くなる」「この価格帯では売れない」といった後ろ向きな言葉をもらったこともありました。
それでも諦めることなく、コストを抑えるためのアルミ材の開発や、より美しく調和するための新たな照明の開発に挑戦するなど、チーム一丸となって、一つずつ課題を乗り越えていきました。

新しいカーポートに対する商品企画の熱い思い、ロジカルに突き詰めたデザイン、そして開発の努力。さまざまな要素が結実して、カーポートSCは誕生したのです。
「これでいい」から「これがいい」へ
発売後は、ご購入いただいたお客様から「価格は高かったけど、これ以外は考えられませんでした」「カーポートSCをつけたことで我が家が立派に見え、家の価値が上がった気がします」といったうれしい声をたくさんいただきました。「住宅と調和していると感じます」と、まさに私たちが目指してきたことをそのまま感じ取っていただける方が多く、開発チームの自信にもなりました。


従来は施工店から勧められる商品の中から「これでいいか」と選ぶお客様が多かったところ、「このカーポートがいい」と、カーポートSCを直接ご指名いただくことも増えています。
カーポートSCは、発売から7年以上経った今も、「薄くフラットな屋根」「視覚的なボリューム感を軽減する」といったデザインポリシーを踏襲しながらも、豊富なバリエーションを展開しています。


カーポートの概念を変え、業界に風穴をあけたカーポートSC。
進化し続ける今後にもご期待ください。
- 語り:カーポートSC 開発チーム(当時)
-
- 今井 英之
- LIXIL HOUSING TECHNOLOGY 商品・デザイン本部 商品戦略部
食品メーカーにて国内及び海外の商品企画・マーケティング・ブランド戦略に携わる。2016年LIXILに参画。カーポートSC開発ではプロジェクトオーナーとしてチームを指揮。
-
- 大塚 建史
- LIXIL HOUSING TECHNOLOGY エクステリア事業部 エクステリア商品開発部 第三商品開発室 商品チーム
1999年東洋エクステリア入社、ウッドデッキ、門まわり商品等の商品開発に携わる。その後、技術開発部門を経て企画部門に従事。カーポートSC開発では企画を担当。
-
- 大崎 健司
- LIXIL HOUSING TECHNOLOGY エクステリア事業部 エクステリア商品開発部 第二商品開発室 開発1チーム
2001年TOSTEM入社、テラス、バルコニー、ハウスメーカー向け商品等の商品開発に携わる。その後、カーポートの商品開発に従事。カーポートSC開発では設計を担当。
-
- 丹羽 新吾
- LIXIL HOUSING TECHNOLOGY 商品・デザイン本部 デザインセンター サッシグループ
デザイン事務所、企業のインハウスデザイナーを経験し、さまざまなジャンルのプロダクトデザインに携わる。2014年LIXILに参画。カーポートSC開発ではデザインを担当。
-
- ※所属は2025年3月時点
カーポートSC
どんな住宅にも美しく調和することにこだわったカーポート
