家の外から考える住まいづくりを
〜 共創パートナー座談会 2025 〜
2025年9月、LIXILの共創パートナーを代表する皆様にお集まりいただき座談会を催しました。社会学的な見地から法政大学の南後由和教授にも加わっていただき、エクステリアの実際と今後のあり方について、皆様から興味深いお話を伺うことができました。業界を牽引する方々が、どのようにして住まいづくりのアプローチを、よりよいものにしようとしているか──住まいづくりをご検討されているお客様をはじめ、住まいのあり方に興味をお持ちの皆様への熱いメッセージです。
- 参加者
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- 株式会社タケウチ 取締役 経営企画室 室⻑
- 竹内 督翔 様
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- 株式会社エクセル 代表取締役
- 川畑 貴志 様
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- グランド工房 取締役 マーケティング本部⻑
- 山田 美保子 様
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- カエデスタイル株式会社 代表取締役
- 藤田 一樹 様
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- 法政大学 デザイン工学部建築学科 教授
- 南後 由和 様
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- LIXIL エクステリア事業部 事業部長
- 大沼 剛

エクステリアで変わる”住まいの満足度”──その実際は?
LIXIL大沼 いろいろ調べてみたら、家を建てたお客様でいちばん残念だったと感じるのが、「庭と外構」というアンケート結果がありました。20代から50代まで、すべて1位が「庭と外構」というものもあり、メーカーとしてはとても残念なものでした。皆さんは、どんな時にお客様からご満足いただいていると実感しますか?
タケウチ 当社では、ただ庭やガーデンルームつくる、駐車場を設置するというだけでなく、お客様がその先も快適に過ごせるようにご提案することを大切にしています。例えば庭を使った家庭菜園は、初めての方の場合、なかなかすぐにはうまくいかないものです。そこで、当社のファーム事業のスペースを貸し出し、専任のアドバイザーの指導のもとであらかじめ体験していただいています。その際に得た知識と経験をうまくご自宅の庭で活かすことができると、お客様から喜んでいただいているようです。
エクセル 当社の場合は、ガーデンルームにこだわって長年やってきていますので、ガーデンルームで部屋を拡張することで生活しやすくなったと喜んでもらえると、お客様に満足していただけているのを実感します。住まう方々の年齢やご家族のライフスタイルに合わせてご提案していくことで、うまく家族団らんの場が提供でき、仲よく暮らしていただけるようです。
グランド工房 以前、お客様からお写真を見せていただいたときに、庭をとても気に入ってくださっていることを実感したことがあります。 お子様が庭で宿題をしている様子を撮った一枚でした。ただ宿題をしているだけなのに、その姿を嬉しそうに見せてくださる親御様の表情がとても印象的で──きっとお子様自身も、少しリゾートに来たような気分で勉強していたのだと思います。今は「映えスポット」に出かけて写真を撮ることがひとつのレジャーになっていますが、家の中ではそうした“特別なシーン”はなかなか生まれません。でも、庭があれば、日常の中に“ちょっとした非日常”をつくることができるのです。
お客様からはよく、 「夫のゴルフに行く回数が減った」 「家に帰ってくるのが早くなった」 といった声も聞かれます。 最初は「庭にそんなにお金をかけてどうするの?」と反対していたご主人が、今ではお風呂上がりにわざわざ庭でビールを飲むようになった──そんなエピソードもあります。そうしたお話を伺うたびに、庭はライフスタイルを楽しく変える力を持っているのだと感じます。
カエデスタイル お客様とお話ししていく中で、いちばん多い悩みが「カーテンを開けられない」ことです。新築の家を建てたけれども、リビングの窓のカーテンを開けたまま過ごせないといったお悩みです。理由はさまざまで、「外から見られてしまう」「通行人やお隣が気になる」「お隣の裏側が物置になっていて景観が悪い」など。さらにシャッターを閉めている方も多くいらっしゃいます。
これをどうにかしたいということで提案していく中で、リビングの延長線としてつながる場所を作っていくと、そこで過ごせるようになります。居場所を今までより広げることができます。広いリビングを作って庭がないより、リビングを少し狭くしてでもテラスをつなげれば、外に出られて、緑があり、風や光を感じられます。そこでお酒が飲めたりご飯を食べたりできるほうが豊かな生活を実現できます。エクステリアを新たにしたことで、家に対する考え方が変わったと、満足していただけるお客様が多いです。
プロフェッショナルとして
とことん工夫しこだわり、お客様に寄り添う
タケウチ 新築の場合などケースによりますが、まだ何もない状態の時に、ロープを張って仮組みをして実際のスケール感を体験していただきます。「階段はここに付きます」「ウッドデッキのサイズ感はこれくらいなのですが、よろしいですか?」といった具合に確認していただきます。そこでお客様から「意外に大きかったね」と言われることもありますし、時間はかかるのですが、お客様にも安心していただけるのではないかと思います。
カエデスタイル 確かにお客様には1/100の図面とパースだけでは、スケール感はわかりづらいものです。
エクセル 工夫という点では、最初にお客様のご家族みんなからしっかりヒアリングすることも大事にしています。お子様がいらしたら、もちろんお子様にもお聞きします。最初はお父様、お母様が座っていて、ちょっと離れたところでお子様が聞いていたりすると、絶対に興味をお持ちなので、「一緒にこちらで話しませんか?」といった感じで声をかけたら、必ず来てくれます。使う方全員が満足できるものを提案できるように意識して取り組んでいます。
タケウチ 例えば、ウッドデッキがほしいお客様に、特にやりとりせずにそのままウッドデッキを提案する業者さんもいるのですが、大事なのは「お客様がそこで何をされたいのか」だと思います。それをお聞きできるかどうかで大きく変わるはずです。もしかしたらウッドデッキではないかもしれないですし、段下がりのタイルステージなのかもしれない──プロとして違う目線でお話ししながら、お客様が気づいていないニーズに対して応えられるかどうかが大事なのではと思います。

グランド工房 そうですね。どれだけ自分自身のポケットからアイデアや資料、情報を取り出せるかということも、とても大事だと思います。
カエデスタイル そもそもお客様のほうには、エクステリアに関する知識がほぼないというところから始まる仕事ですので、ヒアリングとはいえ、情報をきちんと伝えながら提案してくことが大事です。営業でもそうですし、その前段階のマーケティングのところでもしっかりそこは伝えるべきだと思っています。
景観やコミュニティとの調和
エクステリアを通じて生まれる社会的価値
グランド工房 お客様からのご要望として意外に多いのが、「お隣からの視線をさえぎりたい」「お隣の勝手口がリビングの前だから、気になってしまう」 といったご相談です。「庭を整えて外構を素敵にすると、コミュニティのきっかけになる」と期待されている反面、生活が垣間見れる庭・リビング前空間では「プライバシーをしっかり確保したい」という考えです。
家の道路側の部分に関しては、ご近所とのつながりで「キレイにしていますね」と声を掛け合うなどのコミュニケーションはできるかもしれないですが、お隣とは「仲はよいのだけれど、距離も置いておきたい」という思いがあるようです。そんなバランスを大切にされる方が多いのです。私たちは、そうした「心地よい距離感”をつくる庭」を意識してご提案しています。
カエデスタイル 日本は高度成長期の戦略もあったのかもしれないですが、個人個人が家をそれぞれ好き勝手に建てる文化になってしまっています。洋風の家の隣に和風の家があるなど、街並みとしてはチグハグに家が建っていることが多いです。街づくり全体の計画の中でどういう家を建てていくか、そうした視点がなかなか日本にはないようです。
家を建てるということは、景観をつくることでもあります。例えば、庭に木を植えることでお客様の満足度が上がることは大切ですが、お隣から見てもよいとなれば、余計にプラスです。うまく共存することで、その木の価値がさらに高まります。そうした住まいづくりができれば、もっとみんなが心地よくなるし、街全体の価値も上がると思います。

南後 確かに現代社会において、「地域の人とつながりましょう」「地域と社会をつなぎましょう」と言われても、地域差はあれど、例えば東京や福岡のような大都市で隣近所同士が「何か一緒にしましょう」というのは、ハードルが高いと思います。でも、会話によるコミュニケーションがなくても、エクステリアという空間や構えを通じて、街との連関やネットワークを築くことができます。人間同士だけでなくても、人と物、人と自然、あるいは人とインフラの関係性を通じて、地球とのつながりを感じ取るといったこともできるはずです。そうしたことがエクステリアからの広がりとして見えてきますし、エクステリアは、個人や家庭の営みが街の風景の一部を形成しているということを実感し、その魅力を味わえるものです。
歩いていてよい街だな、散歩していて楽しい街だなと感じるのは、それぞれの個人や家庭の営みが溢れ出している家々が建ち並ぶ街です。そこにエクステリアの可能性があると思います。
満足のいく住まいづくりのために、
エクステリアも含めたトータルな資金計画を
LIXIL大沼 私たちがいつも課題に感じているのが、住宅を建てる際の終盤でほとんどの打ち合わせが終わってから「ちなみに外構どうします?」と言われることです。その時点でもう図面が決まってしまっていて、スペース的に厳しかったり、お客様のほうでももう余裕がなかったりすることがあります。もっと前から考えていたら、豊かな暮らしができるのにもったいないなと感じています。
カエデスタイル 住宅の打ち合わせの構造上、そうなってしまっているのではないかと思います。家を建てようと思ったら、まず資金計画でローンを通すのがスタートですので。そしてその時点では、エクステリアのプランはまだないケースがほとんどです。しばらくしてようやく外構の話になったと思ったら、もう余裕がないという残念な結果になってしまいます。住まいづくりのもっと最初の上流のところから入っていかないと、エクステリアは余裕があるお客様以外は難しくなってしまいます。
LIXIL大沼 そもそも住まいづくりの打ち合わせスタイルが、そうなってしまっています。そこをなんとかするために、どうしようかと知恵を絞っているのですが。
カエデスタイル お客様がそうしたことを早い段階から知っていれば、エクステリアも含めて考えたほうがよいと、きっと思っていただけるはずです。トータルな資金計画をお客様が要望して、当初からきちんと外構分も確保するかたちになることを期待しています。
エクセル まだ建築前の段階で、お客様とハウスメーカーさんと私たちでエクステリアも含めた打ち合わせができるようになれば、もっといろいろなことが実現できるはずです。うまく三位一体で取り組むことが住まいづくりの理想だと思います。

敷地全体を活かしてこそ、理想の住まいに近づく
建物を建てるだけが住まいづくりではない
カエデスタイル よく営業担当と話すのですが、多くの方々が家の中から住まいづくりをしようと思っています。視点が家の中なのです。だからうまくいきません。家の中に立って、そこから間取りをどうしようかと見ているわけです。パズルのように、ここはリビング、この隙間にトイレを置いて、水まわりを通して──そうしたことを取っ替え引っ替えやっているので、間取りを決めるのに時間がかかってしまいます。
逆なのです。外から家を見てほしいのです。ランドスケープはどうなっているか、そこの敷地にどんなポテンシャルがあるか、日当たりはどうなっているか、どこに立ったら何が見えるか、どんな景観が抜けているだろうか、と。そうした視点で見ていくと、おのずと住まい全体の間取りが決まるはずです。「どこで飲むコーヒーがいちばんうまいだろうか? それならリビングはここに、庭はこうつなげていこう」というふうに、全体の間取りが、外から、自然と決まっていくはずです。そこから家の中の細かい間取りは調整していけばよいのではないかと思います。
建物を建てるのが住まいづくりではなくて、その敷地全体を活かしながら自分たちの住まいをつくり暮らしていく──そうした住まいづくりが当たり前になってほしいと感じています。
南後 外構は“外”を示す言葉ですし、エクステリアの“EX”も“外”の意味を持ちます。お話にあった通り、まず家という内部を中心にして“外”と言っているわけです。このような見方をどのようにして変えていくか。“外”という言葉が持っているイメージの強さをどう書き換えていくか。そこが大きなテーマかもしれません。
カエデスタイル 「モノづくりではなくコトづくり」「コト売り」などとよく言いますが、本当にコトを考えるなら、敷地全体をコトで考えてもいいと思うのです。「ここはどういう気持ちになる場所なのだろう」などと、まずは建物やエクステリアといったことは一旦とっぱらって、コトで考えるのです。「ここに木があったらいいな」「このあたりで寝ると気持ちよさそう」といったように考えていって、家のかたちや空間が決まってくる。これが本当の住まいづくりなのではないかと思うのです。

私的・公的の境界をデザインする──
個人と家族、住まいと地域・社会をつなぐエクステリア
南後 私の知人で評論家・作家の宇野常寛さんが『庭の話』(講談社)という本を昨年出されたのですが、その中で、庭とは何なのかという話をしています。庭というのは、人間が介入することによって、ある程度はできるのですが、完全にはコントロールできません。それは草花も、樹木も、虫も同じです。つまり関与はできるのだけれど支配はできません。しかも時間によっても変化します。そうしたものと、どう向き合っていくのかが、エクステリアにとって重要だということを、今日は改めて再認識しました。
外構=エクステリアは、お隣であったり、道路であったり、公共空間への“構え”を意識して計画されています。一方で、プライベートな私的内部空間の延長としても捉えられるし、外から見るとパブリックな公的外部空間の取り組みとしても捉えられます。そうした私的・公的の境界をデザインする仕事と捉えるならば、とても可能性のある領域だなと思いました。
物理的な外構の“構え”も重要なのですが、どのような家で、どんなふうに生きるのか、どういうライフスタイルで過ごしていくのか、近隣の皆さんとの関係をどう育むのか。さらにスケールを替えれば、どう地球環境を捉え、どういうふうに地球に住まうのか。そうした社会的な“構え”も、実はエクステリアに直接表れるはずです。「人の佇まいがその人の成りを表す」と言いますが、建物の佇まい、住居の佇まいという言葉もありますので、それを彩るうえでエクステリアが果たしている役割は、とても大きいのではないでしょうか。

EXSIORとともにエクステリア空間を創るプロフェッショナル
共創パートナー2025